原子力発電所の廃止措置に係る公開ワークショップの開催概要(NRA・US-NRC共催)
2015年4月16日
平成27年4月8日(水)東京にて、原子力規制委員会(NRA)と米国原子力規制委員会(US-NRC)の共催で、原子力発電所の廃止措置に係るワークショップを一般公開の下、開催しました。本ワークショップは、原子力安全規制の高度化に向けた日米の原子力規制委員会の協力の一環として開催したものであり、原子力発電所の廃止措置に係る規制の取組について議論しました。本ワークショップで行われた講演概要及びそれに関連した質疑について以下の通り紹介します。
講演1:米国における原子力プラントの廃止措置の状況
スティーブン・バーンズ US-NRC委員長
(1)講演概要
- 原子力エネルギー法の下で法的権限を有するUS-NRCは、廃止措置に係る包括的な規制活動を実施するとともに、ガイダンスの策定及び監視活動を行っている。
- これまでに10基のプラントの廃止措置が完了している。安全基準(0.25mSv/年)を満たす跡地は、解放(利用制限なし)されている。
- 廃止措置において市民参画は重要なプロセスであり、US-NRCは情報公開やパブリックミーティングの開催などにより、その機会を提供するとともに、事業者にも市民参画に取り組むよう働きかけている。
- 規制がより効率的・効果的なものとなるよう、経験を踏まえた継続的な改善に取り組んでいる。現在、運転段階から廃止措置段階へのプラントの移行の効率化を目指したルール作りに取り組んでいる。
(2)講演後の質疑応答
- US-NRCが市民参画の機会を提供する法的位置づけについて。
- 事業者による廃止措置の費用の確保に関するUS-NRCの審査について。
講演2:発電用原子炉の廃止措置:規制の知見と課題に関する米国の視点
スコット・ムーア US-NRC核物質安全・保障措置局 局長代理
(1)講演概要
- 原子炉の恒久停止後に許認可前提事項と規制要求事項を変更するには、煩雑な手続きが必要となり、これが大きな負担となっていることから、US-NRCは新しいルール作りに向けた検討を実施している。また、廃止措置段階の監視プログラムの見直しも行っている。
- 米国においては、事業者による廃止措置費用の確保の状況をチェックすることも規制活動と位置付けられているが、廃炉費用の変動要因(プロジェクトの遅れ、放射性廃棄物の処分場の動向、新しいビジネスモデルの登場など)が多くあり、これに対応する必要がある。
- 放射性廃棄物の処分については、使用済み燃料の処分場がないこと、クラスCを超える廃棄物(GTCC)の処分方策がないこと、低レベル放射性廃棄物の処分場が4か所に限られていることが課題である。
- 使用済み燃料の処分場がない中で、使用済み燃料のサイト内保管は様々な課題(長期保管の安全確保)を有している。
(2)講演後の質疑応答にて議論された主な事柄
- 廃止措置の規制に係る人材(人数、求められる能力)について。
- 放射性レベルが比較的高い「クラスCを超える廃棄物(GTCC)」の扱いについて。
- 廃止措置に係る費用の増加傾向について。
- 同一サイトに複数プラントがある場合の廃止措置について。
講演3:日本における廃止措置規制の状況とその課題
田中知 原子力規制委員会委員
(1)講演概要
- 日本では、4基が廃止措置中である。最近、電力会社が5基について、廃炉の決定を発表している。
- 「原子炉施設の解体」、「保有する核燃料物質の譲渡し」、「核燃料物質による汚染の除去」「核燃料物質によって汚染された物の廃棄」で構成される原子炉施設廃止措置は、(1)使用済み燃料の搬出→(2)系統除染→(3)安全貯蔵→(4)解体・撤去の手順で進められる。
- 廃止措置に係る規制は、「廃止措置計画の認可」、「廃止措置段階の規制」、「廃止措置が終了したことの確認」の3つに区分される。これらを通じて放射性物質の安全な閉じ込めが図られるよう規制する。
- 余裕深度処分の対象となる「比較的放射能レベルが高い廃棄物」に関する規制基準の整備が、重要かつ喫緊な課題であり、原子力規制委員会では、廃棄物の特徴を踏まえつつ、安全確保策を確実なものとするための規制要求事項を検討している。
(2)講演後の質疑応答にて議論された主な事柄
- 廃止措置に係る規制活動を行う上でのパブリックコミニュケーションの考え方について
- プラント運転終了に際しての発電所の所有権の移転について
講演4:福島第一原子力発電所の廃炉に向けて
更田豊志 原子力規制委員会委員
(1)講演概要
- 原子力規制委員会は福島第一原子力発電所の廃炉作業に関し、「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の中期的リスクの低減目標マップ(平成27年2月版)」を策定するなど、安全確保とリスク低減の双方の観点から、柔軟な規制を行っている。
- 汚染水対策では、処理済水がサイト内に大量に保管されており、これが廃炉作業を進める上で大きな障害となることから、実現性のある解決策への関係者の理解を得るための取り組みが重要。
- 地下水対策にあたっては、建屋内流入を抑制する一方で、建屋からの高濃度汚染水の流出を防止するため、地下水バイパス、サブドレンによる地下水くみ上げ、遮水壁の設置等いずれの対策においても、地下水の水位制御が極めて重要である。
- その他、地震・津波対策、排水路からの放射性物質の流出抑制、労働環境改善、炉内調査にも適切かつ柔軟に取り組んでいく。
- 原子力規制委員会は、人と環境を守ることを大前提に、福島第一原子力発電所の廃炉作業を適切に推進させる必要があり、そこに固有の難しさがある。
(2)講演後の質疑応答にて議論された主な事柄
- 汚染水処理済水の課題(トリチウムの扱い等)について
お問い合わせ先
原子力規制庁
原子力規制庁 長官官房 総務課 国際室
原子力規制庁 長官官房 総務課 国際室
担当:岸岡、松木
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電話(直通)03-5114-2107