田中委員長年頭所感

2017年1月4日
原子力規制委員会委員長 田中俊一

皆さん、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。年頭にあたり、昨年までの取り組みを踏まえつつ、本年の課題を展望してみたいと思います。

本年9月には、原子力規制委員会・規制庁が発足して5年を迎えます。東京電力福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえて誕生した原子力規制委員会・規制庁(NRA)は、この間「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守る」ことを使命として掲げ、規制基盤を構築することに邁進してきました。本年は、基盤を構築する段階から、より質の高い安全規制を実現する段階を目指す、スタートの年になると考えています。

新規制基準に基づく原子力発電所の審査は、8基の審査が終わり、3基の原子力発電所が稼働を開始しました。複数の発電所の審査が終盤にさしかかっており、今年は原子力発電所の審査と安全な運転を担保するための検査を並行して進めなければなりません。さらに、核燃料取扱施設の審査や稼働、原発や様々な原子力施設の廃止、廃棄物の処分にかかる規則の整備の他、放射性同位元素やモニタリング、核セキュリテイなどに係る業務も加わり、極めて多様で忙しい年になるものと思います。

一昨年、稼働を再開した九州電力川内原子力発電所は、1号機、2号機ともトラブル無しに最初の定期検査に到達しました。その一方で、昨年4月には東日本大震災以来の規模となる熊本地震が発生し、川内原子力発電所に対する国民の不安が高まりました。原子力規制委員会は、臨時会合を開催して、川内原子力発電所に異常がないことを確認し、新規制基準に基づく審査が適切であったことも再確認しました。

こうした中、規制委員長として、昨年12月に伊方発電所が立地する愛媛県、伊方町、八幡浜市を訪問し、原子力災害対策指針と新規制基準について、自治体の首長や住民の方々に屋内退避の有効性や熊本地震の原子力発電所への影響等についてご説明して、意見交換を行いました。その中で、立地地域の方々は、様々な情報が乱れ飛ぶ中で、地震や複合災害時の避難計画や原子力発電所への影響に対する不安が大きいことを実感しました。新規制基準は、東京電力福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こさせないため、原子力利用から人と環境を守るためにあるという理解を得て、原子力災害対策指針の意図を正しく受け入れてもらうには、さらなる努力が必要であることを痛感しました。

昨年1月の国際原子力機関(IAEA)によるIRRSレビューは、NRAにとって極めて重要な取り組みでした。実効的な独立性及び透明性を有する原子力規制委員会を設立したこと、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を、新規制基準として、迅速かつ実効的に反映させたこと等が良好事例として評価される一方で、改善すべき多くの指摘を受けました。NRAは、組織を挙げてIRRSレビューを積極的に受け止め、原子炉等規制法などの改正を含めた取り組みを進めていますが、これは、NRAが国際的にも高いレベルの原子力規制行政機関になるための大きな試金石になるものと考えています。もう一歩の努力を傾注し、新たな規制の仕組みを構築するために頑張りましょう。

最後に、福島のことについて触れます。東京電力福島第一原子力発電所の事故により避難を余儀なくされていた多くの方が、この春にはそれぞれの故郷に帰還することが予定されていますが、今なお、廃炉作業の状況には大きな不安を抱いています。原子力規制庁には、中期的リスク低減マップに沿って廃炉作業が安全に、着実に進むように、東京電力に対する監視・指導を強化し、地域の皆さんが安心して生活ができる環境にすべく最善を尽くして頂くようお願いします。

今年は原子力規制委員会発足から5年を迎え、次の5年を準備する大切な年です。職員の皆さん、健康管理には気を付けながら、共に頑張っていきましょう。

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