運転段階の安全規制 健全性評価

健全性評価制度とは、原子力発電設備にひび割れが生じた場合に、その設備の健全性を評価するための手法をルールとして明確にしたものです。

2002年8月に明らかになった原子力発電所に関する一連の不正問題の再発を防止するために、2002年12月に電気事業法等の改正が行われ、事業者に対し、定期に原子力発電設備の検査を行うことを義務づけました。また、その検査において、安全上重要な設備にひび割れが発見された場合には、設備の構造上の健全性評価を行い、その結果について記録・保存し、原子力規制委員会へ報告することを義務づけています。

健全性評価制度

原子力発電所における設備の健全性をしっかり見極めるため、安全上重要な設備にひびや摩耗などが見つかった場合には、事業者にその進展を予測して安全性への影響(設備の健全性)を評価することが義務づけられています。

この評価の結果、安全水準を満たすことが確認できれば使い続けることができ、水準を満たすことができない場合には、設備の補修や取替えが必要となります。

健全評価の流れと健全性評価の方法(イメージ)の図

また、安全水準を満たし使い続けることが可能となった場合においても、安全水準を満たす予測期間内の一定期間毎に亀裂の進行状況をチェックする必要があります。

これらの健全性評価により、健全性が損なわれる前に必要な補修・取り替えを行うことが可能となります。健全性評価の結果については、記録・保存するとともに原子力規制委員会へ報告することが義務付けられています。

ここでもうひとつ大切なことは、この「健全性評価」を科学的・合理的な根拠に基づいて実施することです。

原子力規制委員会では、日本機械学会の「維持規格(発電用原子炉規格)」について技術的妥当性の評価を行い、信頼できる規制基準として活用しています。こうした「維持規格」はアメリカをはじめ、多くの国々で採用されています。

健全性評価の評価基準(維持基準)

健全性評価制度の対象設備は

  • (1)原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器(クラス1機器)に属する容器及び管(フランジ他、接合部及びシール部、蒸気発生器 伝熱管を除く)
  • (2)炉心支持構造物(炉心シュラウド・シュラウドサポートリング・シュラウドサポート(平成18年1月1日より追加)に限る)

とされています。原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器や炉心支持構造物にひび割れや亀裂が発見された場合、健全性評価制度で説明したとおり進展予測を行い、設備が安全水準を満たしているかどうかを評価・判断し、使い続けられるか取替えが必要かを判断します。

ひびや摩耗があっても、すぐに安全を損なうわけではありません。どのようなものでも使い続けていけば自然と劣化していきます。原子力発電所の重要な機器も同様です。しかし、すぐに壊れてしまうということはありません。それは安全のために余裕を持たせて作られているからです。

強度を保つために必要な厚さ(イメージ)

このように原子炉の重要な機器は自然に起こる劣化を十分に考慮し作られており、健全性を確認しつつ安全に利用されています。

PD(Performance Demonstration)認証制度

健全性評価は、超音波探傷試験により測定されるひび割れ深さを基に行いますが、適切な評価を行うためには、当該測定が所定の測定精度を有することが重要です。

PD認証制度は、試験員、試験装置及び試験要領からなる超音波探傷試験システムを対象として原子力発電所の原子炉 再循環系配管等に発生したひび割れ深さの測定能力を認証し、配管等の健全性評価を行うための基本データであるひび割れ深さの測定精度を保証するものです。

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