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更田委員長職員訓示(東京電力・福島第一原子力発電所の事故から7年にあたって)

2018年3月9日
原子力規制委員会委員長 更田豊志

明後日、日曜日に東日本大震災、そして東京電力・福島第一原子力発電所事故の発生から7回目の3月11日を迎えます。

ある新聞社の企画に次の言葉が寄せられたと聞きました。
「このような思いは、次の世代には絶対にさせないで下さい。」

飯舘村の女子中学生の言葉だそうです。飯舘村の菅野村長はこの言葉が大変心に残っていると語り、そして「この災害、事故から私たちは何を学んで、何を次の世代に伝えるかが大事なのだと思う。」と仰っていました。

この機会に、福島第一原子力発電所事故の反省として、私が強く意識してきたことについてお話ししたいと思います。

安全の追求は、”現状維持欲求”との戦いでもあります。私たち人間には現状を維持したがるという欲求があり、たとえ大きなメリットをもたらすことであっても、新たな行為に伴うデメリットの方をより強く意識してしまい、これを避けようとする傾向があります。深刻な失敗をしてしまうまで、今の状態が続くものと信じたがり、デメリットを伴う選択と向き合わず、行為を避ける、あるいは後送りしてしまう。

こうした”現状維持欲求”にあらがって改善を続けるには、安全の追求に対する強い意志を持つことが重要です。

事故の教訓に基づいて、規制は大きく変わりました。しかしながら、この新たに生まれた現状に対して、これを維持したいという姿勢が生まれてくることを私は恐れています。

”現状維持欲求”は、私たちの日々の業務にも影を落としかねないものです。”現状維持欲求”は日常の業務や思考を定型化、パターン化させようとする姿勢に繋がります。安全の追求には、想定外との戦いという側面があり、深刻な事故はほとんどの場合、想定外のことが起きたときに始まります。私たちは常に、見落としていることは無いか、欠けていることは無いか、考えに甘いところは無いかを追求し続ける必要があります。このとき、判断に向けた私たちの思考をパターン化させてしまうことが大きな障害となります。

規制委員会、規制庁としての経験が積み重なりつつあるなかで、審査も検査もその他の業務も、効率化の名の下に、徒にパターン化が進んでしまうことを恐れています。これまでの審査や同種の審査でこうだったからここでもこうだとは考えないで欲しい。決められたことを決められた通りに進めるのではなく、必要と思えば、原点に戻って考えることを厭わないで欲しいと思います。今までこれでよしとしてきたので今更言い出せないとは決して考えないで欲しい。

過ちを改めること、足らざるを補うことを決して憚ってはならないというのは、事故の重要な教訓の一つであると考えています。

そして、“事故は終わっていない”ということを改めて申し上げたいと思います。

“事故は終わっていない”というのは決して比喩でもレトリックでも無く、まさに事故は終わっていません。

判断、理解、知識、決断力の至らなさが深刻な事故の発生に繋がっただけでなく、事故の発生後も、様々な判断や決断の有無が、事故の影響、被害の大きさを左右してきました。そして今なお、事故の影響、被害の大きさを左右する判断の機会が続いています。

除染、廃棄物の処理・処分、風評被害対策、避難区域の解除、復興に係るあらゆる判断がこれからも続きます。原子力規制委員会、原子力規制庁にとっては、福島第一原子力発電所の困難な廃炉作業に対する規制上の判断がより一層重要になります。これまで、現場の方々の努力によって、リスクは大幅に低減されています。一方で、作業の困難さは今後一層高まるものと思われます。未だに事故の傷跡を曝し、おびただしい数のタンクが並んでいる福島第一原子力発電所には、多くの方々が不安を感じています。原子力規制委員会が、福島第一原子力発電所の現状とリスクとを、可能な限り正確にわかりやすく発信する努力を強めていくこともますます重要です。

飯舘村の中学生の言葉は、次世代への責任を考える機会を与えてくれました。福島第一原子力発電所事故の発生から7年を迎えるにあたり、安全の追求に終わりはないということを決して忘れず、次世代への責任を胸に、それぞれの業務にあたることを一同にお願いして本日の訓示とします。

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