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国際シンポジウム 原子力安全確保のための自然現象への対応の概要

国際シンポジウムの画像

 平成27年5月21日(木)、原子力規制委員会は、米国原子力規制委員会(NRC)前委員長であるジョージ・ワシントン大学のアリソン・マクファーレン教授と京都大学名誉教授の入倉孝次郎先生をお招きして、国際シンポジウムを開催し、原子力の安全確保に向けた自然現象への対応について討論しました。本シンポジウムで行われた講演の概要と討論の概要について、以下のとおり紹介します。

第1部:講演 NRC委員長の経験を踏まえて

マクファーレン委員の画像

基調講演:Regulating nuclear power in an Active Earth
アリソン・マクファーレン ジョージ・ワシントン大学教授
講演資料【PDF:8MB】

講演の概要

  • 民主主義国家において原子力プログラムを行う上では、信頼されかつ独立性を有する規制機関が必要である。独立性を確保する上では、政治及び産業界からの影響の排除、十分な資金、技術的能力、独立性維持のために政府の支援が必要である。また信頼性確保については、規制機関が活動を行う上で、公開性及び透明性の維持確保に努めることが重要である。
  • 「原子炉施設の解体」、「保有する核燃料物質の譲渡し」、「核燃料物質による汚染の除去」「核燃料物質によって汚染された物の廃棄」で構成される原子炉施設廃止措置は、(1)使用済み燃料の搬出→(2)系統除染→(3)安全貯蔵→(4)解体・撤去の手順で進められる。
  • 供用期間中の原子炉の安全確保のためには、地震のみならず洪水や強風、過度な温度変化などのさまざまな自然現象の影響を考慮する必要がある。
  • バックエンド施設については、使用済燃料プール、乾式貯蔵キャスク、再処理施設において、原子炉と同様に自然現象の影響を考慮する必要がある。また地下埋設の最終処分場については、地下水の影響など地下特有の自然環境に起因する影響を考慮しなければならない。
  • 福島第一原子力発電所の事故後、米国ではNRCが、地震と洪水を対象とした自然ハザードの見直し評価の実施を事業者に要求した。加えて他の自然現象も含め、自然ハザード評価の定期的な見直しを事業者に要求することを検討している。
  • 「予測が難しい」、「大規模な事故につながるリスクがある」などの特有の難しさを念頭に、自然ハザードへの対応を考える必要がある。
  • 地質学は常に発展する学問であり、今後もその進歩とともに地質変動についての理解が根本的に変わりうることから、少なくとも10年に1回は、最新の知見に照らし合わせて規制を見直すことが重要である。
  • 米国では、確率論的アプローチを用いた地震ハザード解析が実用化されている。これら手法を使用するに当たっては、「低頻度であるが一度発生したならば重要な結果をもたらす事象を軽視していないか」、「存在しないかもしれない周期性を想定していないか」、「地質学的な時間のスケールは大きいことから、人類が有するデータは絶対的に不足している」といったことに注意を払い、不確定性を扱うべきである。
  • 自然現象に対処する上で、決定論的アプローチと確率論的アプローチの両方を適用すべきである。またこれらアプローチを適用する際には、不確実性を考慮すると共に、保守的な判断をすべきである。

講演後の主な質疑応答

  • 最終処分場の設置に関する意思決定を行う際の時間的な制約について
  • 新しい知見に基づいて安全性評価を見直した結果、供用期間中の原子力発電所に潜在的な危険があることが判明した場合の措置について
  • 原子力規制委員会の活動について

第2部:討論 原子力安全確保のための自然現象(特に地震・津波)への対応

討論に先立ち、原子力規制委員会の石渡委員より、原子力規制委員会が原子力安全の確保を目的に実施している自然現象への対応について、また強震動の専門家として長年原子力発電と地震の問題に取り組んできた入倉京都大学名誉教授より、原子力発電所の地震対策の変遷について、報告があった。

報告1:新規制基準における自然現象への対応

石渡明委員の画像

石渡明 原子力規制委員会委員

報告資料【PDF:5MB】

報告の概要

  • 新規制基準では、自然現象等に係る想定の大幅な引き上げとそれに対する防護対策を強化している。また地震・津波のハザードをより厳しく評価することを求めている。
  • 川内原子力発電所の審査では、科学的データを基に保守的な判断を行った。その結果、地震の大きさや津波高さといった設計上想定すべきハザードは、申請時の事業者の評価値を上回った。また審査の過程では、審査会合の公開や審査書への意見募集(パブリックコメント)を行うなど、透明性の確保に努めた。

報告2:原子力発電所の地震対策の変遷

入倉教授の画像

入倉孝次郎 京都大学名誉教授

報告の概要

  • 最新知見の反映を主目的に、1981年に策定された耐震設計審査指針が2006年に改訂された。2006年の改訂プロセスでは、確率論的アプローチの導入が検討されたが、許容できるリスクレベルの決定といった技術を超えた問題について、国民的議論がつくされていないとの認識から、確率論的アプローチの直接的な導入は見送られた。
  • 耐震設計審査指針(改訂版)では、地震動を算定する際に、各種パラメーターの不確かさを考慮するといった形で、不確実性をとり扱っている。また設計想定外事象への対応については、できるかぎり残余のリスク(設計事象の超過確率)の低減に努めるべきとの方針を定めた。
  • 福島第一原子力発電所の事故後に原子力規制委員会が策定した新規制基準では、2006年改訂の耐震設計指針の考え方を踏襲しつつ、自然現象への対応が強化されている。またこの運用においては、不確かさを考慮し、かつ保守的な判断が行われている。

討論の概要

「新規制基準などの設計上考慮すべき規制要求事項の妥当性」と「設計想定を超えた事象への対処」を論点とし、討論を行いました。パネリストの意見は、主に以下のとおりです。

討論会の画像

【パネリスト】
アリソン・マクファーレン ジョージ・ワシントン大学教授
入倉孝次郎 京都大学名誉教授
更田豊志 原子力規制委員会委員
石渡明 原子力規制委員会委員
【モデレーター】
櫻田道夫 原子力規制庁原子力規制部長

1.確率論的アプローチの導入に関する意見

  • 確率論的アプローチの更なる適用に向け、活動している原子力規制委員会の取り組みは正しいと思う。(マクファーレン氏)
  • 確率論的アプローチを直接的に適用する際には、許容できるリスクレベルを決定しなければならない。そのための国民的な議論が必要。(入倉氏)
  • 個別のプラントのトータルの安全性を確率論的に評価しようとすると、全てのハザードを対象としたフルスコープのPRAを実施しなければならないが、現時点ではこのようなことが出来る技術水準に至ってはいない。(更田氏)
  • 原子力規制委員会では、審査において基準地震動と基準津波の超過確率を参照するなど、確率論的リスク評価から得られる知見を活用している。(石渡氏)

2.自然現象への対応のあり方に関する意見

  • 多重性を持たせることによって信頼性を向上させるといったランダム故障への対応のアプローチとは異なり、共通要因によって複数機器が一斉に機能を喪失する可能性がある自然現象への対応においては、離隔や個別の格納といった物理的分離に加え、異なる動作原理を有する複数機器の設置による多様性の拡張といったアプローチが必要となる。(更田氏)
  • 米国ではNRCが自然現象への対応強化を目的に、事業者に対してサイト周辺に事故対応に資する機器を新たに設置すること及びオフサイトから事故対応に必要な機器を24時間以内に運べるようにすることを求めている。事業者は、緊急時対応センターの設置を含め、NRCの要求を満たすべく、取り組みを実施している。(マクファーレン氏)
  • 津波などに比べて、地震というのは深層防護の考え方の適用が難しい。(更田氏)

3.最新知見の反映に関する意見

  • 最新知見を基に、原子力安全に取り組むことが重要である。(マクファーレン氏)
  • 確率論的リスク評価については、ノンエルゴティックアプローチに基づくシミュレーション評価の実施など、技術の進展がみられる。(入倉氏)

討論後の主な質疑応答

確率論的安全評価に関する米国の動向について

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